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「IDEAはテナント誘致の心強い説得材料」――新宿サザンテラスのイルミネーション効果を定量的に示せた(小田急電鉄様)

(左から浅井様、原様、室様、新倉様、今田様)

小田急電鉄株式会社様は、イベント実施による通行量の変化の調査や駅周辺テナント誘致などの目的で人流調査を行っておりましたが、人力による調査のため、省人化かつ安定したデータの取得方法を模索しておりました。

AIを搭載したエッジカメラ「IDEA counter」(以下、AIカメラ)を新宿サザンテラスに設置し、どのような成果があったのか、小田急電鉄株式会社 まちづくり事業本部 アセット事業部の課長 原 浩二郎様、課長代理 浅井 聡様、事務員 室 樹様、小田急総合研究所 課長 今田 淳一様、副主任研究員 新倉 啓介様にお話をお伺いました。※本インタビューは2023年4月中旬に実施されました

導入の決め手:独自性あるサービスとサービスの改善体制

――まずは事業・業務内容について教えてください。

浅井様:会社のメイン事業は鉄道業と不動産業です。私たちはそのなかでも不動産業のオフィス物件を中心とした、AM(アセットマネジメント)やPM(プロパティマネジメント)に携わる部署に所属しております。

――今回、IDEAをご検討いただいたきっかけや導入前の課題について教えてください。

新倉様:弊社ではイベント実施による通行量の変化の調査や街づくり・駅周辺テナント誘致などの目的で人流調査を毎年秋頃に平日1日、休日1日を使って人力で取得しておりましたが、人の労力が非常に掛かっている状況でした。

人流調査はコロナ禍をきっかけに2020年以降は中止になっておりましたが、テレビニュースで渋谷のセンター街に設置されたAIを搭載したエッジカメラの測定によって人出が戻りつつあるという報道を目にし、データの提供先の企業がIntelligence Design社と標記されていたので、同社に問い合わせました。

――導入の決め手について教えてください。

新倉様:独自性あるサービスとサービスの改善体制がしっかりしている2点です。

やはり一番はAIカメラの存在自体が新鮮だったことです。ノンプログラミングでAIを活用できるプラットフォーム「IDEA」を提供している点に惹かれました。さらに、担当者の方から2020年から2022年にかけてAIカメラの製品が継続的に改善されていることをお伺いし、サービスの改善体制含めて安心できると感じました。

導入の狙い:人流調査を1年単位の「点」から、1日単位の「線」へ

――導入される際、どのような点に苦労されましたか?

新倉様:AIカメラによる撮影のため、顔情報を始めとした個人情報の取得方法や取扱いについては慎重に調整しました。また、技術的な観点としては、AIカメラを稼働する際の電源確保です。今回設置した場所は設置場所ちかくにあるイルミネーション用の配電盤があったので、そこから電源を確保することで対応できました。

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(提供:小田急電鉄株式会社|AIカメラ設置箇所)

【取得データについて】
・設置箇所:新宿駅サザンテラス駅前通路
・取得対象:AIカメラで2段面、計4方向の通行量を測定
・取得データ:歩行者・通行量・属性(性別/年齢)といった駅前通路の利用状況をデータとして計測

小田急電鉄,AIカメラ
(個人情報を保存・蓄積しないスキームのイメージ図)

――1ヵ月間の実証実験を経て、今回1年間の実証実験に向けて導入いただけるとのことで、今回の狙いについて教えてください。

新倉様:1ヵ月ほどの実証実験の結果を受け、改めて年間を通じたAIカメラによるデータ集計が必要と判断しました。またAIカメラがアップデートしたことも後押し材料となりました。アップデート後のカメラの精度を把握し、完全に人力に頼っている人流調査の省人化を図る取り組みです。

さらには通年で実施することで春夏秋冬や季節性のイベントにおける集客効果等を把握することも狙いのひとつです。従来の調査では、毎年「秋」という「点」でしか調査できなかった状態から、「1年」という「線」で調査できるようになります。

導入の手応え:イルミネーション効果を定量的に可視化、テナント誘致時の説得材料に

――取得したデータの活用例やビジネスへの活かし方について教えてください。

今田様:データのメイン活用例としては、イベントの効果測定以外にも、テナント様のリニューアル効果測定や競合施設の新規出店による影響調査、既存テナント企業向けの賃料交渉資料の改良、テナント誘引計画の精緻化等への活用をしております。

今後については、特にテナント様に向けた売り上げを改善するためのマーケティングツールとしても有効活用ができるのではないかと期待しております。

――導入後の成果や手応えについてはいかがでしょうか?

原様:人の経験や感覚といった定性的な情報をデータとしてきちんと定量的に可視化することができたのは大きな成果です。今後、テナント様との賃料交渉時やイベント出店の投資対効果を示す際に活用していきたいと考えています。

イベントの誘致やテナントへの出店を提案する際、以前は「毎年1回実施していた流動データを元に一定の人流があることを説明する」という断片的なデータの提供がメインでしたが、AIカメラを導入したことで、今後は季節ごと・時間帯ごとの人流の傾向を示すデータの提供等、連続した数値的根拠も交えた提案を行うことができるのではと考えています。

コロナによる規制が掛かる前は新宿サザンテラスのテナント全体の業績も良く、イルミネーション以外にもライブやイベント等を弊社にて開催しており、今よりも多くの費用を掛けていました。しかし、コロナをきっかけに、イベント開催やテナント誘致時の判断軸に投資対効果をよりシビアに求めるようになったように感じます。そういった意味で社内での大きな説得材料につながっています。

室様:2022年11月半ばからイルミネーションの効果測定をするためにAIカメラを導入しましたが、導入前2週間と導入後2週間を比較したところ、イルミネーション導入後に客足や売り上げの上昇が見られました。上昇率が1%程度なら誤差かもしれませんが、サザンテラスの人流が、イルミネーション点灯開始以降10%以上の増加を確認することができ、イルミネーションの効果を定量的に示すことができたのは非常に嬉しかったですよね。

浅井様:イルミネーション開催後、人流が平日11.7%増、休日13.8%増という結果がでました。売り上げを増加させた裏付けデータを取得することができたと言えます。さらにクリスマス期間とそれ以外の期間を比較すると、平日で16.1%、休日で29.7%、12月24日に至っては34.6%も増加したことがわかりました。

従来の人流調査では平日1回、休日1回しかできていなかった取り組みから、こういった形で通年のデータを取得できるようになったことで、より詳細な効果を把握できるようになったと実感しています。

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(提供:小田急電鉄株式会社|イルミネーションの実施で人流が二桁増へ)

今後の展望:年代別などの属性ごとに取得して分析の可能性を広げたい

――今後、弊社に期待することについて一言お願いします。

新倉様:6月にアップデートがある人物の特徴を抽出したターゲティングにも期待しています!通行者データを年代別などの属性ごとに取得して、売上データの変動要因を特定する際の説明変数としても役立てたいです。

例えば、現在コロナが落ち着きつつありますが、サザンテラスにある各店舗間で、売上の戻りが出ている店舗と出ていない店舗の差が出ています。こうした際、「サザンテラスを通行されるお客さまの年代にお店の提供するサービスが一致していない」というような仮説が生まれるデータ粒度になると、分析の可能性も広がりそうです。

2023年6月からのAIカメラのアップデート、実現を楽しみにしています!

――ありがとうございました!

<会社概要>
会社名:小田急電鉄株式会社様
代表者:取締役社長 星野 晃司
事業内容:鉄道事業、不動産業、その他事業
設立:1948年6月1日(前身の小田原急行鉄道は1923年5月1日設立)
本店所在地:〒151-0053 東京都渋谷区代々木2丁目28番12号
URL:https://www.odakyu.jp/

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