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AI技術を活用し、商業施設の価値を高めるためには(阪急阪神不動産・阪急阪急ビルマネジメント)


阪急阪神ホールディングスグループは、大阪・梅田エリアに有するオフィス・商業施設・ホテル等の多様な施設とグループ各社の総合力を活かした まちづくりのDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指しています。

AI技術を効果的に活用した商業施設の価値向上を将来的に目指す、阪急阪神不動産および、阪急阪急ビルマネジメントのご担当者に、AIカメラ導入の目的や導入して新たにわかったことについてお話を伺いました。

【インタビューにご協力頂いた皆さま】
●阪急阪神不動産 賃貸事業部 商業企画グループ
・谷村様、木付様、田村様、梶田様、細田様
●阪急阪神ビルマネジメント SC第一営業部
・山内様、河合様、近藤様

AIカメラの導入理由:AI技術を活用した、商業施設の価値向上

――ご担当者様の所属部署と役割を教えてください。

谷村様:私が所属する阪急阪神不動産 賃貸事業部 商業企画グループは、阪急阪神ホールディングスグループの中で、商業施設の運営管理や新規企画を主に担当しています。

具体的には、阪急電鉄と阪神電気鉄道の沿線を中心に、梅田の「阪急三番街」や「HEP FIVE」、そして今回の実証実験の対象である「ハービスOSAKA・ハービスENT」などのショッピングセンターを運営しています。その業務の中で、デジタル施策を活用し、商業施設の価値を向上させるための情報収集と施策検討を行っています。

山内様:阪急阪急ビルマネジメントは、主に阪急阪神不動産から各物件の運営管理を受託するグループ会社であり、日々の現場運営を担っております。私、河合、近藤は大阪梅田の商業施設「ハービスOSAKA・ハービスENT」の物件内に事務所を構え、運営や販売促進を担当しております。新しいプロジェクトを進める際には、今回の実証実験のように、阪急阪神不動産、阪急阪神ビルマネジメントで協力、役割分担を行いながら活動しています。

――AIカメラの導入然りですが、”デジタル”というキーワードは商業施設においてどのような位置づけとして認識されていますか?

細田様:これまで商業施設の一番の価値は、複数のテナント様に場所をお貸しし、集客力を高めることにありました。しかし今後はそれだけでなく、商業施設に入居いただくからこそテナント様に提供できる価値がさらに求められるようになると感じているため、人流分析を一例とした、新たな付加価値の提供を日々模索しています。

特にコロナ禍以降、商業施設の役割やお客様のニーズに変化が見られています。ECサイトの台頭により、リアルの店舗に行かなくても便利に買い物できるという環境になっていること、採用難の深刻化による店舗スタッフ不足をうけ、働き方改革、効率的な営業へのニーズが高まっていることが、代表的な変化としては挙げられるかと思います。この変化を受け、商業施設においても、より付加価値の提供が求められており、デジタル技術への投資が今後一層必要になると考えています。また、来館いただくお客様に対しても、デジタルを活用した、また来館したくなる便利なサービスを導入したいと考えています。

――IDEAを導入いただいた理由について教えてください。

木付様:導入背景には、デジタル技術を用いた商業施設の価値向上を目指す中で、AIカメラ技術の可能性を検証したいという考えがありました。

実証実験を行う中では、AIカメラの属性分析の精度向上等、様々な場面で専門知識を求められることが多く、Intelligence Design社の専門家の皆さまに全面的にサポートいただけたことは非常にありがたかったです。Intelligence Design社は、他企業様や行政とも多くの共同プロジェクトに取り組まれており、豊富な知見をお持ちであるため、私たちの要望に対しても、何度も寄り添ったご提案をしていただくことができました。

実証実験の概要:AIカメラのデータに基にテナント、施設来場者の解像度を深める

――今回の実証実験の概要と目的について改めて教えてください。

田村様:この実証実験は、2023年の2月から5月にかけて、ハービスENT地下2階で行いました。施設として元々感じていた来館者属性との比較を行うこと、そしてAIカメラの有用性を確認することを主な目的としています。
具体的には以下の3つのステップを意識して、人数カウントや属性分析の精度を検証しました。

1.AIカメラを用いた商業施設での人流解析の技術検証
2.取得データの今後の活用についての検討
3.取得データと当社提供サービスとの連携可能性の検討

検証の結果、AIカメラが示したデータと我々がもっていた仮説には、特定の場所における人流が想定よりも多かったり、特定の属性の来館者が想定より多かったり、といったギャップが確認されました。AIカメラのデータのおかげで、来館者属性を改めて理解し直すことに繋がったと感じています。

――カメラ設置や、実証実験の開始にあたって、苦労したことについてお伺いしてもよろしいでしょうか?

近藤様:カメラの設置に関して、画角が非常に重要であることを感じました。適切な位置にカメラを設置することで初めて、属性を正確に判別できるようになります。この位置選定には、施設設備の場所等様々な要因が絡んでくるため、最適な位置の決定には苦労しました。
実証段階では、施設環境に合わせて行うAIのチューニング作業など、機械学習や精度確認にも多くの時間を要しました。

(提供:阪急阪神不動産)

実証実験からの発見:来館者属性に関する分析

――実証実験のデータ踏まえて、新たにわかったことや手応えを感じた点について教えてください。

山内様:今回の実証実験では、取得できるデータや当社としてのデータの活用方法に興味があったことに加え、入居しているテナント様に、お役に立ていただけるデータを提供できるかどうかも重要でした。

実証実験を通して、我々が地下2階通路を日常的に見ているなかで持っていた仮説と、実際にデータで得られた通行者属性の間での、小さなギャップに気づくことができました。この気づきは、今後のテナントへのアドバイス等に活かしていくことができる、重要な気づきになったと感じています。

河合様:得られたデータを基に、テナント様とのミーティングを行いました。データを活用するにあたっての店舗様側のご意見やニーズを直接伺うことができ、非常に有意義であったと感じています。テナント様からは、自らデータを収集し分析するのは大変だが、人流データには興味をもっている、という所感を伺うことができました。今後、データの精度や活用方法によっては、テナント様に喜んでいただけるのでは、という、確かな可能性を感じております。

(提供:阪急阪神不動産)

近藤様:河合の意見とも被りますが、テナント様とのミーティングは非常に有益でした。自身が持っていた印象をデータと照らし合わせ、店舗との対話を深めることができました。

例として、来店者年齢のボリューム層が我々の想定と異なっていた店舗がありました。ハービスには施設内に劇団四季の劇場があるのですが、劇団四季の公演後に来店するお客様の年齢のボリューム層も踏まえ、劇団四季帰りの方のご利用も、イメージすることができました。
このように、人流解析データによって来店するお客様を把握することで、今後の販促施策などの策定に繋がると感じています。

今後の取組み:データ活用の範囲拡大と売り上げを創出する販促活動への展開

――今後、新たに行いたい取り組みについて、教えていただいてもよろしいでしょうか?

梶田様:今回のプロジェクトは既存店舗への情報提供とその活用に焦点を絞っていましたが、今後の取組として例えば次の2点が挙げられます。

1つ目は、新店リーシングでのデータ活用です。現状、多くの施設では入館者数のみを計測していますが、AIカメラの活用により、特定のエリアの人流など、より詳細なデータを取得できると考えています。

2つ目は、大規模リニューアルの検討に際してのデータ活用です。人流を正確に把握することで、より精度の高い検討が進められるのでは、と考えています。

近藤様:今回の実証実験では、店舗の入店数や滞在時間も計測しました。今後は、特定のエリアをスポット的に解析するアプローチも検討したいと考えております。このような取り組みにおいて、カメラの設置位置を柔軟に変更できることは、今後の展開の1つのカギになるのではないでしょうか。
また、データを利活用した売上予測も、1つの目指すべき姿になると捉えています。今後、異なる場面でAIカメラの活用を行う際にも、この経験を活かして取り組んでいきたいですね。

ID社への今後の期待:AIカメラのデータと自社が保有するデータの活用

――今後弊社に期待することやサポートについて教えてください。

谷村様:今回の実証実験では、主にAIカメラを用いた人流解析の可能性を確かめることを目標としていました。この点に関しては、達成できたと感じています。

今後は、このデータの具体的な活用方法について考えることが課題であると思っています。我々は現在、実証実験結果を社内で共有し、今後の具体的な活用方針について議論しています。
また、我々だけでは情報収集にも限度がありますので、今後もIntelligence Design社と協力し、最新の人流解析技術や活用事例などの情報収集を続けていきたいと考えています。

山内様:今回の実証実験では、単にデータを収集するだけではなく、我々商業施設の運営者としてのニーズや目標を紐解いていただきながら、進めることができました。担当者の末廣さんからの手厚いフォローを受けたことで、データやアウトプットに関する議論が深化したと感じています。この議論の過程で、我々も多くの気づきを得ることができました。

我々は、入館者数などの様々なデータを保有していますが、これらのデータの有効な活用方法は常に課題でした。実証実験を通して議論を深めたことで、これらのデータ活用についても少し糸口が見えてきたように感じています。

Intelligence Design社の強みの1つは、「できること」と「できないこと」をはっきりと伝えてくれるところだと思います。さらに「できない」と回答した部分でも、「まずはチャレンジしてみましょう!」と伴走してくれたことが印象的でした。

このような経験を基に、今後もIntelligence Design社とより良い関係を築き、共にソリューションを探っていきたいです。

――ありがとうございました!

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